2007.03.31 掲載

むねあかどり 2


  それから数えきれないほどの年月がたちました。エルサレムの郊外のバラの茨の中にムネアカドリがヒナ鳥を育てていました。母鳥はヒナたちに話していました。今まで何とかして胸毛を赤くしようと努力したご先祖たちの苦心談を話してやりました。
 初代のムネアカドリはね「私の心にやどる恋の炎で胸が赤くなるまで、愛して愛して愛しぬけというのが神様のみ心なのだ」と思えたのだよ。そこで恋の炎を燃やし続けたのだが、それは失敗だったよ。「歌を楽しみにしたご先祖様もあったよ」と母鳥は言いました。「私の心にたどる熱い歌ごころ、それが胸毛を赤く染めるだろう」と歌って歌って歌いぬいたけれど、それも失敗だった。「勇ましく他の鳥や動物たちと戦って、心に燃える闘志によって胸毛を赤く染めようと考えたご先祖たちもあったっけ」とまた母鳥は言いました。「真っ赤な血潮で一時は胸毛が赤く染まったのだが、水を浴びたら消えてしまったのだよ」「何をやっても、どんなことをしてもすべてが失敗だった」と。

  母鳥がヒナたちに話をしてやっていたときでした。エルサレムの門から大勢の人々が出てきました。それは3人の人を十字架につけるためでした。「人間はなんとむごいことをするのだろう」と小鳥たちは言いました。3人の中の真ん中の人には釘で手足を十字架に打ちつけただけではまだ足りず、トゲだらけの茨の冠までがかぶせられています。顔に茨の棘がささって血が流れ出しました。小鳥はその人をじっと見ていました。優しい目をした人です。本当に悲しげでしたが、誰をも恨んでいませんでした。自分に酷いことをしている人にまで、慈愛のこもった目で見ておられるだけでした。




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