2007.03.31 掲載

むねあかどり 3



  小鳥は茨の冠の人にいよいよ同情が湧いてくるのを覚えました。「私に鷹のような強いくちばしや強い爪があったら、あの人の両手の釘を引き抜いて、あの人を苦しめているやつらをやっつけてやるのに」と思いました。だが、弱い弱い小鳥です。恐くて、今まで一度も人間の側にも寄ったことすらない小鳥です。でも、自分にできることがあると気づいたのです。少し勇気を出せば・・・・。小鳥は茨の冠の人のそばに飛んで行きました。そして、その人の額にささった棘をくちばしで引き抜きました。ところがその時です。十字架の人の血がひとしずく小鳥の胸に落ちました。しずくはみるみる拡がり伝わり、短い柔らかい胸毛をすっかり染めてしまったのです。十字架の人は唇を動かして小鳥にささやかれました。「お前の優しい心のおかげでお前の一族が世の初めから求めてきたものを、今こそお前は得られたのだよ」。小鳥がどんなに水を浴びても、その胸の赤い色は消えません。その上、ヒナたちが大きくなってみるとその胸毛は血のような赤い色が輝いていました。生まれてくるどの子にもどの子にも同じ色が首から胸に真っ赤に輝いています。






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